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第1回目の項を読み返してみると、こんなことが書いてある。 日本には眺めるべきものがたくさんあり、 食べるべきおいしいものがたくさんあった。 山があり、海があり、畑があり、田んぼがあり、 埃まみれの白い軽トラックがたくさん走っていた。 それらの風景は延々と途切れなく続いた。 濃い緑色のおいしそうなスイカがあり、 トマトは果物がわりに食べられるほど甘かった。 そういう感じだったと思う。 でも、旅をしている最中は実はそうは思っていなかった。 私はこれまでにも、わりといろいろな国を旅行してきたと思う。 そして、どの旅行も最高に楽しかった。 来て良かった、と必ず思った。 計画を立てている段階で、「これはちょっと楽しくならないかも」と懸念していても、 いざ行ってみると、何だ楽しいじゃない!となった。 ところが、今回の日本国内旅行では、 今ここで旅を終わらせろと言われても、それはそれでいいかもしれない、 と思う瞬間が何度かあった。 旅の途中でそんな風に思ったことはこれまで一度もなかったのにと、少し寂しかった。 理由は幾つかあると思う。 でも、やはり、その大きなのは、 日本では旅行以外にやることがたくさんあるからだろうと思う。 友達に会うとか、家族とゆっくり過ごすとか、 実家の犬をからかうとか、近所の本屋で立ち読みをするとか。 もちろん、日本以外の国でも、だいたい同じようなことをしたりもするけれど、 量的にも質的にも日本でのそれとは異なる。 つまり、旅というものに集中できなかったのだろう。 たぶん、何回やっても結果は同じになる気がする。 どんなにたくさんの友達と会った後でも、 どれだけの時間を家族と過ごした後でも、 犬に嫌われるほどになった後でも、 棚に並んだ本を知り尽くほど本屋に通った後でも、 やはり、旅している最中に、ふと誰かの顔が思い浮かんだりするにちがいない。 それが遠く離れた故郷いうものなのだろうか? 或いは、これまでにしっかりとホームシックをしていないからだろうか? でも、今は、その旅行はもう甘い記憶となっている。 山も海も畑も田んぼも、 埃だらけの白いトラクターも、 数々の観光名所も、 あふれるほどの食材も、 全てはひとつの言葉にくるまれてそこにある。 それらを思い出すたびに、ああ、行って良かったなと思うようになっている。 旅好きの体質がそうさせるのだろうか? 随分うまく出来ているなあと自分でも感心する。 いずれにしても、日本は、無限に楽しかった旅たちのひとつとして保管されている。 あの国を旅することはもうないにしても。
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