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ハワイに滞在していた3週間あまりの間、
私はずっと仏教に関する本を読んでいた。 対談形式のわりに内容は難しく、 気楽に読める感じの本ではなかったのだけれど、 街中を歩いていて少し休憩した時とか、海岸とか、 ホテルのベッドの上などで集中して読むことが出来た。(*1) ハワイと仏教というのが合う合わないは別にして、 例えば、滞在中によく聞いていた音楽を耳にすると、 ふとその日のことを思い出すような感じで、 無意識のうちに、その2つがリンクするということが起きてもいいと思うのだけれど、 本のことを考えるとハワイのことが思い浮かぶとか、 ハワイのことを考えると本のことを思い出すとか、 そういうことが一切なく、ハワイはハワイ、本は本として位置づけられてしまっている。 それは、もしかすると、ハワイの土地の性格なのかもしれないなと思う。 これまでに書いた文章をさっと読み返してみると、 ホノルル国際空港へ降り立った時の感じとか、ヒロの世界観とか、 カウアイ島での満足感についてとか、 訪れた場所で得た「感覚」を書いていることが多い。 もちろん、ハワイ諸島全体に共通する性格というのもあったが、 島それぞれ、或いは島の中でも土地土地によって、 その「感覚」に随分違いがあったように思う。 日本列島の中でさえ、例えば、東京と大阪は全然違うし、 千葉と埼玉でさえ全然違うわけだから、 何も不思議なことではないのだろうけれど、 ハワイのことを考えるとき、 一つ一つの思い出の個別に存在する感じの強さは、 東京と大阪を個別に考えるのとはまた違った印象がある。 それらを「ハワイ」というカテゴリーでまとめるのが困難な感じがするのだ。 さまざまな土地の名前を書いたカードが並べられていて、 その横に地域名や国名の書かれた箱が置いてあったとする。 カードの上に書かれた土地を一つ一つ確認し、 それが属すると思われる地域なり国なりの名前の書かれた箱に入れていく、 という作業をしようとした場合、 「ヒロ」「カラパナ」「サウス・ポイント」「キャプテン・クック」「ハナレイ・ベイ」 「キラウェア・ポイント」「ホノルル」などと書かれたカードについては、 うまく処理できないのではないか、という気がするのだ。 「ハワイ」と書かれた箱を見つけて、そこに入れればいいということは頭では分かっていても、それでは正確に分類したことにはならないのではないか、という風に思うような気がするのだ。 自分で新しく箱を作り、そこに「ヒロ」とか「カラパナ」とか書いて分類したほうがしっくりくるように思う。 第13回の章で、 大抵の人が自分のことを「ハワイ人」と考えているという印象があった。 そしてそれは、その地に住むために強制されたアイデンティティーということではなく、 「個人的にそう思っている」という感じだった。 と言うようなことを書き、それはある種の処世術かもしれないとも思ったのだけれど、 ハワイに住むということは、そういうことなのかもしれない。 つまり、すごく個人的なことなのだろう。 ハワイには土地に力があると言われるが、人がそう思うことの中には、 「ヒロ」が個人的にそこに存在していることとか、 「カラパナ」が個人的にそこに存在していることとかも関係しているのかもしれない。 そういう存在感が住んでいる人にも伝わるし、訪れるものにも伝わるのだろう。 そうやって考えると、現地で読んでいた本の印象がハワイと重ならないのも何となく納得がいく。 個人的だということは、他のものを尊重することにもつながるから、 良い意味で、不必要に混ざり合わないのだろう。 そういう意味では、根を下ろして住むのは、 もしかすると大変な場所なのかもしれない。 しっかりとした自分というものを、個人的なものとして持っていないことにはやっていけない土地なのかもしれない。 逆に、しっかりとした自分というものを持っていれば、 とても穏やかに過ごせる土地なのだろう。 それはつまり、すばらしい土地だということなのだろう。 (*1)朝日新聞社から出ている「仏教が好き!」というセンスのない題名の本。 対談しているのは河合隼雄さんと中沢新一さんで、題名とは違いかなり興味深い本である。 私はこの本を帰りの飛行機の中で読み終わったのだけれど、ちょうどその日に河合さんが亡くなられていたことを後で知った。 自分が死んだ日に、遠い地で自分の書いた本を読んで考え込んでいる読者がいたというのは、 すごい人生だなあと思う。↑
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