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Cuba
5月1日のメーデーは、共産国や社会主義国がだいたいそうであるように、
キューバにとってもそれはとても大切な日と考えられているようだ。
ハバナの革命広場では、毎年、カストロ議長による演説が行われ、
何万人という人が集まるということである。
我々は、幸運にも当日に広場へ行き、その様子を見ることが出来た。

メーデーこんな機会はそうそうあるものでもないから、
5月1日にはハバナにいることを軸に旅のスケジュールを作り、宿泊先も、革命広場へ歩いて行かれる距離にあるカサ・パティキュラにしていた。
カサのオーナーによれば
「(何もわざわざ混雑した中を出向かなくても)
テレビで放映されるのに、、、、」
ということではあったけれど、
大方のキューバの人はそうは思わないようで、
その日は、だいたい明け方前から外がにぎわっていた。

遠方から参加する人々を乗せた大型バスが何台も通過していく。
広場付近には駐車できないのか、
我々のカサの周りに停めるのもあり、
中からは揃いのTシャツを着た人々やら、じいさんやらばあさんやら、
奇声をあげる若者やら、何やらかんやらをどんどんとと吐き出していく。
我々も6時過ぎには出掛ける準備をすませ、
まだ薄暗い中をそうした人々とともにゾロゾロと広場へ向かった。
広場へ着く頃には空がすっかり明け、
気温をどんどん上げていくつもりらしい太陽が元気に顔を出していた。

広場の入り口付近は既にたくさんの人でごった返している。
グループで固まり、歌を歌ったりして騒いでいる。
小さなキューバ国旗を無料で配る人がおり、皆、手に旗を持ってふっている。
出店などは出ていない。
せいぜいキャンディーを売り歩く人がいるくらいだ。
そこかしこでサンドイッチを配っている人がいるのだけれど、
それは売り物ではないとのことだった。
グループで参加するような場合、サービスで付くかするのだろうと思う。

メーデー何となく、皆が勝手に何かをしているという雰囲気が漂っており、広場まで来たのはいいけれど、
この先どこで何をすればいいのか
さっぱり分からない。
入り口付近にこれだけ大勢の人が
停滞しているということは、
中の方はいっぱいなのだろうと思ったのだけれど、
取り合えずは人ごみを掻き分けて、
もっと前の方へ行ってみることにする。
すると、割と中の方は空いていて、どんどん前へ進むことが出来る。
キューバの人には、例えば、日本の花見の席取りのような感覚はないようで、
前の方がイコール良い席、という風には考えていないようだ。
「この辺り」がいいと自分が思えば、そこよりも前に進もうという感じがない。

ということで、我々はどんどんと人ごみを掻き分け続け、
だいたい広場の真ん中辺りまで来ることが出来た。
ここからだと演壇も見えるし、まあいいだろうということになる。
演壇の後方、つまり我々の前方には、
ホセ・マーティンのアート風の白い銅像と、その更に後ろには、
三角錐の形をした同じように白い展望台が空高くそびえている。
我々の今来た後方の方には、
チェ・ゲバラの顔の書かれた有名な建物(内務省)がある。
そして、ここでも、相変わらず人々は歌を歌い、配られたサンドイッチ、
或いは、持参した食べ物をムシャムシャと食べている。
朝早く起きて疲れたのか、地面に寝転んで眠っている人もたくさんいる。
観光客らしき人もちらほらと見えるが、だいたいは地元の人だ。
太陽の位置はどんどんと高くなり、それに伴って気温も上がってくる。

しかし、メーデーの催し物はなかなか始まらない。
朝早く来たものだからそう感じるだけなのだが、
気温がどんどん上がることは分かっているのだから、
さっさと始めればいいのになと思う。
広場には(演壇にも)影になるようなものは何もないし、
周りの建物や地面が全て白いので、余計に暑いのだ。
しかし、そんな思いは届かず、
9時を過ぎた辺りで、ようやく始まった。

何人かの人が熱のこもった演説をする。
アメリカからも政府関係の人が来ていて、
彼は英語で演説をした。
キューバーのメーデーの催し物に呼ばれるくらいだから、
充分にオープンな人なのだろうとは予想がつくけれど、
自国のことをわりと客観的に見た、
なかなか正直な感じのする演説を行っていたようだ。
あの人は誰だったのだろう?
肝心なところをすっかり理解せずにきてしまった。

フィデル・カストロが登場したのは昼も近くなった頃だった。
中には痺れを切らして帰ってしまった人もいたし、眠ったままの人もいる。
さすがに歌は歌っていないが、緊張感のない雰囲気に変化はない。
とは言うものの、歓声や小旗の振り具合はぐんと大きくなる。
カストロはいつもの緑色の軍服姿で、
背筋をすっと伸ばした姿勢で演壇へと歩いてくる。
スペイン語だから演説内容は分からないけれど、
時々、「独立」とか「民主的」とか言う単語を言っているのが分かる。
「カサ・ブランカ(→白い家→ホワイトハウス)」という単語もよく聞こえるので、
何かアメリカのことを話しているに違いない。

カストロは、演説中に右手で左の鎖骨辺りをさする癖がある。
その手は時々人差し指を立てた状態で天に上げられ、
感情をみなぎらせて前後に小刻みにふられる。
彼はその時78歳だと思うのだけれど、とてもエネルギッシュな演説だ。
誰かが止めなければ永遠にやっていそうな気がするくらいである。
カストロの演説の長いことはとても有名で、
国連か何かでやったものがギネスブックに載っているらしい。

我々は2人足しても78歳には少し足りない年齢ではあったけれど、
かれこれ6,7時間も立ちっぱなしでとても疲れたので退散することにした。
演説が続く中、今度は逆の方へ人ごみを掻き分けて進むと、
後ろの方は更に緊張感のない雰囲気になっているのに出くわした。
眠っている人はもちろんのこと、演説を聞かずにおしゃべりをしている人もいる。
かと言って、それを咎める警備員がいるわけでもなく、
祭りを楽しみに来た人々という感じだ。
我々もカストロを背景に写真を撮ったりして楽しむ。

これまでにも何回か書いてきたことではあるけれど、
キューバの特色は何かと問われれば、
それは厳しさと陽気さのバランス感覚のように思う。
厳しさの中に明るさとかゆるやかさが漂う感じである。
旅の途中でも、いろいろなところで見かけた特色であるけれど、
メーデーでのカストロの演説の最中にもそれがあった。
キューバが壊れそうで壊れない理由の1つを
最後にもう一度しっかり見たように思った。

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