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どうしてゆれなかったのかなあと考えている。 きちんと真面目に作られた映画だと思うし、 話の持って行き方も自然で、セリフや描写にぐだぐだした説明があったわけでもないと思う。 とてもいい映画だったという風には感じるのだけれど、でも、どこかで心が自由になるのを妨げられていたように思う。(*1) 兄役の香川照之さんも弟のオダギリジョー(何となく呼びつけの方がしっくりくる)もうまかった。 逆にうますぎたのが良くなかったかなあとも思う。 生まれ故郷で父親の店を継いでいる兄は、静かで優しくて、従業員からの信頼も厚い。 東京へ出て好き勝手に暮らし、写真家として成功している弟は父親と馬が合わない。 それでも、弟は兄とは昔から仲が良くて、とても信頼していた。それが、ある事件をきっかけに、 兄の心の中にある嫉妬や恨みや、自分(弟)を見る目を知ったような気がして、裏切られたように思う。 2人の状況設定がとてもクリアなことに加えて、それに忠実に演技をしてくれるから、 劇中の彼らの状況とピッタリ同じことを経験していないことには、心がゆれてこなかったのかなと思う。 隙間がないというか、物語の進行方向は決まっているんだ、というような感じがした。 兄弟の関係以外のことに気が散ってしまったというのもあると思う。 背景に殺人事件と裁判を持ってきたことから、 橋から落ちた智恵子の母親のことが気になったり、 裁判の行方によって一喜一憂する人達の様子が気になったりした。 これまでの兄弟の関係に大きく影響したと思われるもう1組の兄弟、父と叔父の関係についても気になった。 わりと重要なことが周りに転がっているのだけれど、 それらの描写が兄弟のクリアすぎる描写に対して、ぼんやりし過ぎていたように思った。 だから、そっちに隙間を見つけて、ふらふらと心が漂っていってしまった。 とは言うものの、これは、映画を観ていたときには感じなかったことだけれど、 描写されていなかった裁判後の7年間のことを考えると、少しゆれるように思う。 たぶん、兄も弟も、ずーっと互いのことを考えていただろう。 信頼関係とか、確かなものがあって7年会わないのと、そういうものがないままに月日が過ぎていくのとでは、その差は大きすぎるほど大きい。 存在感を互いに失くしてしまい、どんな風にその長い歳月を過ごしたのだろうか? でも、この兄弟、というか2人の人間にとって、 このキツい7年というのは、きっと必要だったのだろうなと思う。 こうやって考えてみると、あの映画の醍醐味は、 「7年後」という一言で描かれた空白部分にあるのかもしれないなと思う。 (*1)「心が自由になる」というのは、 新潮文庫から出ている「なるほどの対話」 (河合隼雄さんとよしもとばななさんの対談集)の中で よしもとさんが使っていた表現を真似したもの。 映画でも本でも何でも、悲しいとかうれしいとか憎いとか、 ある感情をリードされるのではなくて、 自分の中に元々ある感情の1つ(或いは2つでも3つでも)が何かに呼応して出てくる感じがあるかないか、が非常に大切なんじゃないかと思っている。 この長ったらしい説明の全てが「心が自由になる」という一言に入っていると思ったので、 時々真似をして(勝手に)使わせてもらっている。↑ (2007年3月20日) |
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