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村上春樹の短編小説「トニー滝谷」が原作の映画である。 わざわざ原作と比較する必要はないのだけれど、 それとは別個のものとして成り立つ映画であると感じた。 この小説を私はわりと好きで、何回か読み返したことがあるが、それでも、映画は映画として魅力的なものだったと思う。 巻物とか電車の窓からの景色とか、 何でもいいのだけれど、 横へ流れる感じのあるものが私はとても好きだ。 何となく「そこはかと無い」感じがすると思う。 「トニー滝谷」の物語の中には、 そういう「そこはかと無い」感じが漂っている。 映画の中では、実際に画像が横に流れる。 監督がどう意図したのかは分からないけれど、 理由もなくただぼんやりと流れていく時間が感じられた。 それから、映像の奥にいつも都会の景色が焦点のずれた感じで写っているのも面白いと思う。 まるで家の奥に大きな窓があるみたいに、 室内の映像には必ず、都会の灰色な景色が四角く入っている。 これもまた、物語全体に漂う空洞な感じが表現されていると思う。 原作を読みながら、私自身の頭の中で作り上げられた映像があったはずなのだけれど、 それがすっかり映画のものに置き換えられてしまった。 それでも、原作を読んだ時に感じたぼんやりした感覚は全く損なわられていない。 こうやって、改めて感想を書いていると、 最初は別個のものだと思っていた原作と映画が、 実は私の頭の中でぐしゃぐしゃと、でも心地よく混ざり合っていることに気が付いた。 こういう現象が起きる組み合わせはなかなかないのはないかと思う。 (2005年10月23日) |
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