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韓国映画は、全般的に、シリアスなテーマを笑いながら話すのがうまいと思う。 時々、そのバランスが悪くて、単なる何でもありの映画になっているものもあるけれど、 笑わせられながら話もしっかり聞かされていた、と思うことが多い。 今回の「天下壮士マドンナ」では、 性転換するための手術費用をコツコツ貯めている 高校生の男の子が主人公である。 はじめは地道なアルバイトをしているのだけれど、 韓国相撲(シルム)の試合で優勝賞金が出ることを知り、学校のシルム部に入部する、というところから話が発展していく。 シルム部の部員達や仲の良いクラスメート、 学校の先生や、当然、両親とのやりとりがあり、 シルムを通してや、ゲイに対する認識を通して、 それぞれの関係が良くも悪くも少しずつ変わっていく、という心温まるストーリである。 しかし、全編を通して、その背景にあるものはあくまで「性転換手術費用」であり、 「同性愛」とか「ゲイ」とかいう前に「手術費用」という、とても現実的な事柄がまずあって、 数々の心温まるストーリーが全てその現実性に引きづられて展開していくところがものすごくいい。 メッセージがはっきりとしている映画だと思うけれど、 意外な角度から話を持っていったなと思う。 主人公の男の子は、「女の子になりたいと本人は言うが見た目がどうも」という設定なのだけれど、よく見ると肌は真っ白で肌理細かく、睫毛も長い。 少し痩せるとかして頑張れば結構いいところまでいくだろうと思わせるものがある。 ダンスが憧れているマドンナ以上にうまく、 シルム部の先輩と普通に会話をしながら屋上で踊るシーンは見どころの1つどころか、映画の核となっていると言ってもいいくらいだ。 そのシーンをもう一度見るためにDVDを買う人がいてもおかしくないと思うくらいいい。 ほとんどが笑いのシーンの中で、幾つかネガティブなエピソードがあって、それもまた、というか、それが映画の核になっていたと思う。 1つは、恋焦がれる学校の若い男の先生とのやりとりだ。普段はとてもいい先生なのだけれど、 いきなり男子生徒に告白されて戸惑ったのか、 かなりヒドい言葉を投げつけてしまう、というシーンがある。 その後に、先生との和解があるわけでも何でもなく、 「受け入れられない人だっているさ」という意味合いのものだと思うのだけれど、 その先生というのがスマップの剛くんだというのがいい。 確か、以前に韓国ドラマに出たと聞いたことがあるし、 韓国語もかなり勉強して話せるようになっているとも聞いたことがある。 映画の中でも、 わりと長いセリフを韓国語で話していた。 そういうイメージがすごくポジティブな人を 「受け入れられない人」として起用するのはなかなかうまいと思う。 勝手な思い込みかもしれないが、 結果的に、「受け入れられない」ということがそれ以上にも以下にもなっていなくて、 単にそういうことだよ、という流れになっていたと思う。 もう1つは、シルムを真剣にやっている部員とのやりとりだ。 映画も終盤にさしかかり、マドンナ以上に踊りが上手い男の子への感情はどんどん高まっており、 雰囲気が応援の塊になっているところへ、 さっと、空気を入れ替えるようなシーンだった。 先天的な才能でシルムが上手いことが災いしてか、 目指す技が出来ないということで、あっさりと部を辞めようとする男の子に対し、部員が食って掛かる。 シルムが強くなるために、どれだけの練習をしてきたかということを、 真っ赤な顔をして唾を飛ばしながら怒鳴る部員を見ていると、手術費用が大切なのと同じように、シルムが大切な人もいるということを思い出す。 男の子のことは、数々ある「大切なこと」の1つであり、 もちろん彼の場合には、状況を受け入れてもらえないことも多いから、時には特別な応援も必要だけれど、 本来、それ以上でもそれ以下でもないはずのことだということを思い出させるいいシーンだったと思う。 その他にもいいエピソードやシーンはたくさんあって、 例えば、父親の受け入れ方とか、母親の受け入れ方とか、友達の受け入れ方とか、 そのやり方が人それぞれであるところとか、 とてもバランスのいい映画だと思う。 実際には、観ている間はずっと笑っていたと思うけれど、後で思い返すと、随分といろいろなことを考えていた映画だった。 (2007年1月29日) |
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