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上映時間が土曜の正午という中途半端な時間だったこともあってか、座席は半分も埋まっていなかった。 日本人と思われる観客は私しかおらず、 中には日本語の分かる人もいたかもしれないが、 字幕を全く必要としないのが自分だけかと思うと不思議な感じがした。大方の人が年配で、アジア系の人もいたので少し緊張しながら観た。 製作スタッフの中に「Saving Private Ryan」を監督したスティーブン・スピルバーグの名前があったから、 あの映画のようにすごくリアルな映像になっているのかと思っていたけれど、想像していたより かなりマイルドに仕上げていたように思う。 「あの戦争はこんなもんじゃなかっただろう」 という風にも思うけれど、この映画はそういうことよりは、 「兵士一人一人もまた人間」ということのほうに趣を置いたものだろうから、これはこれでよかったのだろうとも思う。 アメリカ人と日本人どちらにとっても、見る準備がまだ整っていないとも言えるだろう。 戦争を両サイドから見てみるという試みはまだ始まったばかりだし、 今回は1つの例としてアメリカと日本だったわけだけれど、 これからは、日本人の手で、 中国やその他のアジアの国々と日本ということもやっていけたらいいと思う。 (監督のクリント・イーストウッドは、 硫黄島で行われた戦争をアメリカ側からの視点で見た「Flags of Our Fathers(父親たちの星条旗)」という映画も製作している。) 私は日本人だから、日本人ではない人が作った戦争を背景とした映画の中で、 日本人に心がついている様子にありがたいと思ったし、 映画館の中で日本人ではない人が泣いている様子を見てほっとしたりもした。 でも、それに甘えてはいけない、という思いのほうが強かった。 日本に戦争をさせたのは他ならぬ日本人であり、 多くの国々の人にとんでもないことをし、 日本人に対してもとんでもないことをしたのはやはり日本人なのだということを考えてしまう。 実際にそうなのだから、それを認識するのはいいのだろうけれど、それがとても頑ななのだ。 これまでに多くの中国の人と関わりを持ってきたし、 今も持っているという個人的な環境や、 アジア人も多く住むカナダのバンクーバーに住んでいるということも関係しているだろうと思う。 映画を観たからといって、ああそうかと、すっと素直な感情が生まれたりということはなかった。 いや、生まれるのだけれど、それを抑えようとしてしまうことに変わりはなかった。 子供に長いこと会えずにいる、 或いは生まれてまもない赤ちゃんにまだ会えずにいる兵士の気持ちを垣間見たり、 ここはまだ日本なのか?とつぶやきながら死んでいく人を見れば、 それはふっと泣きたい気持ちになる。 けれど、そうだこれは日本兵の話をしているのだと気付くと、後で誰の目にもつかないところでこっそり泣こうという風に思う。 戦況がめちゃくちゃで、もう勝つ見込みはないとなっても、それでも最後まで戦おうとする日本兵を見ると、 投降してくれと思う。 それを美しいサムライ魂などと思って欲しくないと思う。 映画を観た日本の人に対しても思うし、 日本人でない人達にも思う。 投降すれば、死ななくてすんだ人がたくさんいて、 それは日本兵だけでなくアメリカ兵に対してもそうだったのだからと思う。 サムライ魂は正しく使わなければとても恐ろしいものなのだということを感じてくれる人がいたらいいのになと思う。 心の隅で、本当は死にたくなんかなかっただろうにと泣きたくなるけれど、 そんな風に思っていることを口に出してはいけないように思ってしまう。 アメリカ人の持つある種の固執したモノを開かせていくことと、 日本人の持つある種の固執したモノを開かせていくこととには大きな違いがあると思う。 これはあくまで私が個人的に感じていることだけれど、 アメリカの人のそれというのは、 戦争をシンプルに見すぎるところなのかと思う。 英雄というものはそれほど単純に出来上がるものではないということを考えるところにあるのかなと思う。 対照的に、日本の人のそれというのは、複雑に塞ぎ込んだ暗い感情ではないかと思う。 私が普段も感じ、映画を観ながらもやはり感じたような妙な頑なさだ。 感情を抑えてどんよりと口をつむっているよりは、 もっと単純になって、泣きたいときには泣いて、 思うことを言ってみて、 周りの人とともにやるべきことをやっていくほうが有効なことだと分かっていてもそれが出来ない。 それを克服するところにあると思う。 もちろん、一般的にということだけれど。 今回の映画でその固執を取り除くことに手助けしてくれたとすれば、それは、どんな戦争の中でも 「一人一人は人間である」ということの中には日本人も含まれている、ということを大声で言ってくれたことかなと思う。 先にも触れたように、今回は1つの例としてアメリカと日本だったわけで、 中国やその他のアジアの国々と日本という大きなものをやっていかないといけないのだろうと思う。 それをやり易いようにしてくれたと思う。 この映画は「Flags of Our Fathers(父親たちの星条旗)」とセットで観るべきものなのだろう。 私はまだそちらを観ていないけれど、 アメリカの人がどんな思いで固執をはがそうとしているのかを見ることもとても重要だろう。 (2007年1月23日) |
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