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前回書いた「間宮兄弟」と同じような内容になってしまうし、楽しみ方は人それぞれだとは思うけれど、 原作と映画を順繰りに読んだり観たりするのがいいように思った。 私は最初に映画を観てそれだけで充分に楽しめたと思っていたが、原作を読んでみると、 頭の中に残っていた映画の雰囲気に、 それを損なうことなく厚みが加えらたし、逆に、 映画を観ていたことで原作がより面白く読めたとも感じた。 読み進む際に、登場人物たちは全て映画のキャスティング通りになってしまったが、 それが邪魔になることは全くなかった。 原作は群ようこで、それを元に映画を作ったのかと思っていたが、 映画のために書き下ろしたのだということである。 なるほど、それで納得したが、 原作の中での登場人物たちの口調が映画のそれ そのままだった。キャスティングに合わせて著者がそうしたのではないかと思う。 小林聡美、片桐はいり、もたいまさこの3人が主な 登場人物を演じている。 映画の原案なりがあって、それに合わせて俳優を選んだというよりは、このうちの1人或いは全員を起用することを前提に事が進んだのではないかと感じた。 それ以外の俳優たちも、彼女たちが作り出す雰囲気に合う人が選ばれたのではないか。 ある種の映画監督は同じ俳優を繰り返し起用するが、「かもめ食堂」を監督した荻上直子さんというのも、その手の癖があるのかもしれない。 彼女の監督した映画「バーバー吉野」にはもたいまさこが出演しているし、テレビドラマ(脚本)の「やっぱり猫が好き」でも同じくもたいまさこと小林聡美が出演している。 映画の作り方というか出したい雰囲気が固まっていると、どうしても、それが出せる俳優を選ぶのかもしれない。 いろいろなジャンルの映画作りをする監督も好きだけれど、雰囲気が一定している監督も好きだ。 ということで、ストーリーやら何やらというよりも、 そこはやはり雰囲気がとても好きな映画だった。 舞台はフィンランドで、 主人公のサチエ(小林聡美)は食堂を経営している。 かもめ食堂である。そこに、各々が各々に、 不可解といえば不可解な、当然といえば当然なやり方でフィンランド行きを決めた日本人女性2人(片桐はいり、もたいまさこ)が加わるという話である。 その3人と幾人かのフィンランド人の数ヶ月を描いたもので、淡々とした毎日があり、コツコツとした毎日があり、生活の匂いが充分にする内容だ。 前向きな時もあり、後ろ向きな時もあり、 いろいろな性格の人がいて、いろいろな人の事情があって、世界の1つの風景として静かに回っているのが感じられる。それをじっと眺めていると、 不思議とやすらいで、日々自分がやっていることに色が付いたように感じられる。 そういう雰囲気の映画だ。 雰囲気のことを更にいえば、 私は個人的にはフィンランドのそれについては特に魅力を感じたことはなかった。 どちらかというと、というよりはっきりと、 暑くてゴミゴミしたところのほうが好きだから、 例えば、香港とかインドとかスリランカとかメキシコとかブラジルとかいう国々が背景になっている映画を観ると、それだけで半分くらいは満足してしまったりもする。 そういう意味では、フィンランドだと難しい点があることになるが、すっと入っていくことができた。 北欧らしく夏の光のおだやかな様子とか、 サチエが食材を買いに行く市場のアジアのそれとは違う活気とか、 その時に手に持っている買い物籠の色とか、 フィンランド人が好んで食べるニシンのこととか、 食堂の名前となった港のかもめの身体のふくらみとか、(映画では言及されていないが、原作の中では、港のかもめを眺めていて名前を思いつくというシーンがある。)そんなようなことを見ているのはとても楽しかった。 かもめ食堂やサチエの家の内装がIKEA風なところは取って付けたようで、 何だろうな?とは思ったけれど、(IKEAはフィンランドではなくてスウェーデンの会社だけれども、北欧なだけに色使いなどが似ていてどうしてもそうなるのかもしれない。(*1)) しかし、その情景に片桐はいりがとても似合っていて、 彼女が画面に入ることによって、その「取って付けた」感じが少し薄らぐのも興味深かった。 何度も観られる映画だなと思うとともに、 音楽でいうところのBGMのような感じで、 音を小さくして流しておくのにいい映画かなとも思う。 時々、そうやってBGM化させるとやる気がムラムラと湧いてくる映画というのがあるのだけれど、 「かもめ食堂」もきっとそうじゃないかなと思う。 (*1)実際には、もっと高級なフィンランドのブランドを使用したようだ。↑ (2007年1月17日) |
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