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2007年10月5日(金)ラスト・サムライ
数年前にラスト・サムライという映画がヒットした。
映画を観た 私の感想をひとことにまとめると、「尊重を描いた映画」というものだった。
当時書いた文章を読み返してみると、
そうだったなあ、などとまた思ったりもするのだけれど、
中沢新一という人の書いた「アースダイバー」(講談社)という本を読んでいたら、
全く違う見方をしていて、それがとても面白かった。
「アースダイバー」という本を簡潔に説明するのは困難だが、
太古から備わっている人間の思考、心のつくりを解明しようという試みの本で、
その一つの方法として、縄文人の思考の影響を強く受けて成り立っている東京という街を歩きなおすことをしている。
そういう本を書いた人が観ると、「ラスト・サムライ」はそんな風に見えるのかと思った。モノを見る、考える、というのはこういうことを言うのだなと思った。

中沢さんの感想をまとめると、この映画は、アメリカ人が密かに持っているトラウマにより作られた映画だろう、ということになる。
文明の軍隊を前に手斧やら弓矢だけの武装で勇敢に突進してきたアメリカ先住民
(インディアン)と彼らの文化を全滅させた、という記憶である。
映画の中では、サムライという存在をインディアンと重ね合わせて描いている。
確かに、サムライの生き方や死に方の理想はインディアンの伝統として伝えられているものと似ている。
サムライが倒した敵の首を取ることとインディアンが頭の皮をはぐことを照らし合わせ、
どちらも人間の生命力は頭部に宿っていると考えていると見ることが出来る。
屈辱より自殺を選ぶところ、相手の名誉を尊重するところもよく似た風習である。
「ラスト・サムライ」は明らかに「ラスト・オブ・モカヒン」を意識して作られたものであり、
トム・クルーズが最後のサムライの一人となって近代軍隊の前に突撃していくことにより、尊厳を深く傷つけたトラウマから解き放たれることが出来た、というお話になっている。
ということだそうだ。

映画館でこの映画を観ていたとき、私の隣りで嗚咽を漏らしながらわんわん泣いている白人のおじさんがいたことをよく覚えている。
銃で撃たれて穴だらけになったカツモトに、
穴をあけた張本人である政府軍の兵士達が膝をついてお辞儀をするという、
見る人によっては異様にうつるであろうシーンでおじさんが泣き出したので、
「尊重」というものは万国共通なのかと思って感動したのだけれど、
もしかすると、インディアンを穴だらけにした兵士に自分を重ね合わせていた可能性もあったわけだ。

映画は観た人がそれぞれの感想を持てることがすばらしく、
誰の感想がすごくて、誰の感想はペラペラとか、
そういうことはないわけだけれど、
真剣に考えた人の言葉というのは、やはり、心を動かすものだなあと思った。
その視点でもう一度映画を観直してみることだってあるくらいだ。
誰かの心を動かしてやろうとか、うまく書いてやろうとか、ではなく、
「私が思った」ことを言葉に置き換えただけの文章というのは、
その意見に賛成とか何とか言う次元を超えて、心に入ってくるものなのだなあと、
中沢新一さんの本を読んで改めて思った。
自分に向けて書いている文章が、結局、最も他人に届く、
というようなことを言っている作家がいたけれど、
本当にそうだなあと思う。


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