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2007年9月14日(金)ボランティア
ボランティアの定義というのは、
個人、地域、国などによって随分な違いがあると思う。
私が現在住んでいるカナダでは、ほとんどそれは「常識」というか、
市民としての「たしなみ」というような感じで、広く一般に浸透している。
それが「常識」となった背景には、宗教的なものもあるだろうし、
先進国としてや中流階級としての後ろめたさのようなものもあるだろう。
ボランティア活動によって仕事経験をつくる人が多いというようなこともあると思う。
だから、「ボランティアをやっている人=良い人」、
「ボランティアをやらない人=器の小さい人」というような見方はない。
逆に、偽善とかいう見方もない。
ないと言い切っていいだろうと思う。
背景のそのまた裏にある意味を考えれば分かることだけれど、
皆んな、自分のためにやっているからだ。
「情けは人の為ならず」というような生易しいものではない。
「めぐりめぐって」などと周りくどいことは考えておらず、
最初から最後まで、「自分のためにやること」がボランティアの基本的な定義となっている。(*1)

というようなことから、ボランティア活動は幅広く用意されている。
オンラインでの検索には、もちろん大型のデータベースを元にしたサイトがある。
地域別、職種別、団体別でのソートも可能だから、
自分の都合と目的に合ったものを探し出せる。
Googleで適当に検索したボランティア総括団体のサイトから、
私が住んでいる「バンクーバー市」限定で調べてみる。
バンクーバーは、カナダ国内では一応大きな都市ということになっているので、
400件以上の募集がササッとリストアップされた。

ところで、なぜ私がそんなものを調べているかと言えば、
時間がたっぷりある間に(現在失業中)、
前から働いてみたかった図書館でボランティアをやろうと思っていたのが、
図書館職員がストライキに突入してしまったため代わりとなるものを探していることと、
一方では、そろそろ(移民して10年にもなるのにそろそろもないのだけれど)、
日本人社会から抜けて、カナダ人社会の中でも生きていけるようにしようという思いもあった。

そんなようなことを考えながら、400件以上の募集をパラパラと読んでいると、
今まで頭で理解していたカナダ人社会の、その(良い意味での)実態というか、
裏づけというか、肉付けというか、そんなようなものをひしひしと感じた。
カナダという社会を根底で支えているものを見せつけられた、という感じだった。
或いは、個人が自らを支えるためにしていることが、
結果的に社会を支えていることになっている、ということを感じた。

実際に、どんなボランティア活動があるかというと、
例えば、一人暮らしの老人の話し相手や買い物代行、
各種団体が主催する食事供給サービスの手伝い、
老人ホームやさまざまな施設向けのアクティビティの手伝い、
(水泳指導、工芸指導、エクササイズ指導、音楽会での演奏、それらの補佐などなど)
子供向けアクティビティの手伝い。
(各種スポーツチーム、ダンス教室、カンフー教室、音楽教室などのインストラクター)

結構ディープなものも載っている。
例えば、カナダ赤十字からの募集。
「赤十字ファミリーサポート・ボランティア」
応募要領:
*重病の子供を持つファミリーの精神的サポート及び実務補佐の出来る人
*繊細でフレンドリーで、他人を狭量に図らず共感できる安定した心を持った人
*週4時間以上、半年間活動できる人
*30時間の事前トレーニングあり
*募集人数:10人

それから、いろいろな団体が「受付」「会計」「秘書」「人事課スタッフ」などという事務職で募集をかけている。
例えば、ゲイ・コミュニティーからの募集。
「図書館スタッフ」
*レズビアン、ゲイ、性転換、バイセクシャルに関する書籍を扱う、
カナダ国内でも最大の規模を誇る図書館の1つでの仕事
*閲覧者へのサービス、図書カードの発行、貸し出しの管理、蔵書の管理など
*月曜から金曜の週5日勤務
*勤務時間は午後4時から7時或いは午後7時から10時の2シフト制
*コミュニケーション・スキル必須
*読書好きであること
*募集人数:8人

このようなさまざまなボランティア活動が一列に並んでいるのを見ていると、
それらに共通した性格があることが分かった。
「個人のこれまでの経験やスキルを活用して、何かと深く関わりあうこと」
そこには深い関わりあい(コミットメント)があるように思った。
何を今さら当然のことを言っているのかと言われそうだが、
やっていること自体に意味があるのではなく、
それがつながっている先に意味があり、
それに関わっていることに意味があるのだ。
ボランティア活動によって仕事経験をつくる、という場合には、
その職種におもむきが置かれることもあるだろうが、
多くの場合には、この「深い関わりあい」が重要なんだろうと感じる。
私は長年に渡って事務職に付いているので断言出来るが、
例えば、「受付」やら「会計」やら「秘書」やらの仕事には、
それなりの(或いはかなりの)責任と労力が必要だ。
それをボランティア、つまり無給でやろうと思った時、
いったい何が私を支えるかといえば、
それは「深い関わりあい」以外にはないように思う。
無料なんだから、ということで適当に済ますことの出来る仕事ではないのを知っているからだ。
400件の募集には、ある種の世界観が反映されているように思った。

有給、無給という概念を木端微塵とし、はるか昔に宇宙の彼方へ捨て去った社会がここにある。
自らが出来る何かを誇りとし、それを活用できる場所を探す。
何かに深く関わっている、どこかに引っ掛かっていることで自分を支える。
それを日常生活の一部として毎日を暮らす。
それを空気のように吸って暮らす。
そこには、私が現在持っているのとはかなり違う世界観があるように思う。
これは経験してみないわけにはいかないように思っている。


(*1)もちろん、ボランティア活動の種類によっては、「情け」という意味合いでやっている人も多い。
自分の尺度で「情け」を押し付けている場合もあるだろう。
ただ、それでも、情けを人にかけることによって自分が救われているという観点からのことが多いと思う。


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